
中国AWSと日本AWSの違い
〜なぜ中国クラウドは「別物」と言われるのか〜
■ 結論
中国で提供されているAWSは、日本や欧米のグローバルAWSと名称こそ共通していますが、その実態は大きく異なります。単なるリージョンの選択肢の一つではなく、アカウント体系・運営主体・法規制・ネットワーク・機能面のすべてがグローバル環境から分離された「独立したクラウドサービス」です。
そのため、日本で構築したシステムをそのままスライド展開することは技術的・法的に困難であり、中国市場の特性に合わせた専用の設計と運用体制の構築が不可欠となります。

■ 1. アカウント体系の完全な分離
グローバルAWS(日本含む)では、1つのアカウントで東京、バージニア、フランクフルトなどの各リージョンを自由に管理できますが、
中国リージョンはこのエコシステムには含まれません。
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独立した管理コンソール: ログインURLから異なり、IAMユーザーやAWS Organizationsによる一元管理、リソースの共有も相互に連携できません。
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厳格な開設プロセス: アカウント開設には中国法人の営業許可証や実名認証が必須です。日本のように個人や海外法人が即座に利用開始できる環境とは異なり、事前の法的準備が求められます。
■ 2. 運営主体と法的枠組み(外資規制への対応)
中国の法律により、外資企業が単独でクラウドインフラを運営することは認められていません。
そのため、AWSは技術提供に留まり、以下の中国現地企業が運営主体となっています。
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北京リージョン: Sinnet(光環新網)
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寧夏リージョン: NWCD(西雲データ)
この構造により、契約条件、SLA、サポート体制も中国独自のルールが適用されます。
「操作感はAWSだが、契約先と運営は中国企業である」という点を法的・コンプライアンスの観点から理解しておく必要があります。
■ 3. 中国特有の規制(ICP届出・データ管理)
中国でWebサービスやシステムを公開する際、日本国内よりも厳格な法規制への対応が義務付けられています。
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ICP届出(備案): 中国国内でWebサイトを公開するための政府登録制度です。この手続きが完了していない場合、80/443ポート(HTTP/HTTPS)の通信が強制的に遮断され、外部からアクセスできません。
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データセキュリティ法: 個人情報や重要データの国外持ち出しに厳しい制限があり、データは原則として「中国国内に留める」設計が不可欠です。これは単なる技術選定ではなく、法的リスク回避のための必須条件となります。

■ 4. 利用可能なサービス機能とAPIエンドポイントの差異
中国AWSでは、グローバル版と比較して提供されているサービスの種類やアップデート頻度に違いがあります。
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機能のパリティ(同等性): 新サービスの展開が遅れることや、Route 53、Lambda、EKSなどの主要サービスでも一部機能が制限されているケースがあります。
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専用エンドポイント: APIエンドポイントは中国専用ドメイン(*.amazonaws.com.cn)を使用します。
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IaCの調整: TerraformやCloudFormationなどの既存コードを流用する場合、中国環境特有の制約に合わせたコードの修正・調整が必要になります。
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■ 5. ネットワークの隔離とGFW(金盾)の影響
中国と海外のインターネット間には「グレートファイアウォール(GFW)」と呼ばれる強力な通信制御システムが存在します。
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通信の不安定性: 日本と中国間の通信は、遅延(レイテンシ)やパケットロスが発生しやすく、リアルタイムなデータ連携には適していません。
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アーキテクチャの工夫: 安定した通信を確保するには、CEN(Cloud Enterprise Network)等の高品質な回線利用を検討するか、中国国内で完結する非同期型のアーキテクチャ設計が求められます。
■ 6. 支払い・財務・サポート体制
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通貨と決済: 支払いは人民元(CNY)に限定されます。また、中国独自の公式領収書(増値税発票 / Fapiao)の管理など、現地の会計慣習への対応が必要です。
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言語サポート: サポートは主に中国語と英語となります。日本から運用を行う場合、現地の商習慣と技術仕様の両方に精通した運用体制を構築することが重要です。
■ まとめ
中国AWSはグローバルAWSの延長線上にあるものではなく、法律・インフラ・運用のすべてが独立した「中国専用プラットフォーム」です。
成功の鍵は、既存の設計思想をそのまま持ち込むのではなく、中国特有の規制やネットワーク環境を前提とした、ゼロベースの「中国専用アーキテクチャ」を設計することにあります。事前の十分な調査と、現地仕様に合わせた最適化がプロジェクトの成否を分けるポイントとなります。